大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)726号 判決

主文

理由

上告代理人水野東太郎、同荒井秀夫、同佐藤正勝、同岩崎修の上告理由第一及び同松島朝永の上告理由第一点について

不動産の所有者から右所有権を譲り受けてその登記を経由した者は、登記簿滅失による回復登記申請期間を徒過しても、右登記後所有権を譲り受けた第三者に対し自己の所有権取得を対抗できることは、当裁判所の判例(昭和三一年(オ)第七四九号同三四年七月二四日第二小法廷判決・民集一三巻八号一一九六頁)とするところである。したがつて、原審の確定した事実関係のもとにおいて被上告人が上告人らに対し登記がなくても本件土地の所有権を対抗しうるものとした原審の判断は、正当である。また、右事実によれば、本件土地についてされた上告人宮里フミ名義の所有権保存登記は、係員の勧告に従い、争いの根本的解決を裁判にゆだねることを前提として所有権申告手続を進めるためにされたものであつて、被上告人と右上告人との通謀によるものではないというのであり、所論は、原判決を正解しないものである。原判決に所論の違法はなく、論旨はいずれも採用することができない。

上告代理人水野東太郎、同荒井秀夫、同佐藤正勝、同岩崎修の上告理由第二について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第三について

所論時効取得の点は上告人らが原審において主張しないところであるから、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

上告代理人松島朝永の上告理由第二点について

被上告人が本件土地を宮里栄亮から買い受けるにつき行政官庁の認可を受けたとする原審の認定は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らして是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第三点について

登記簿上現在の権利関係と一致しない登記が存する場合には、実体的な権利者は、右登記名義人を相手方として自己が所有者であることの確認及び右登記の抹消を請求することができるものというべきである。論旨は、独自の見解に基づき原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顕)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例